鬼頭の花嫁

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「桜ちゃん――!!」 名を呼ばれて我に帰ると、声のする方へと視線を向ける。 するとそこには、士都麻光晴の姿があった。どうやら探されていたらしい。 「やっと見つけた、探しとったんや…」 苦笑混じりにそう告げる相手を見つめ、今朝あった電話の内容を思い出す。 「……華鬼の花嫁のこと?」 少しの間を開けて光晴は大きく頷き桜を見据えてから、肩に背負っていた藍色の竹刀袋らしきものを桜に手渡す。 「……麗ちゃんからの預かりもんや、桜ちゃんに返すて」 手渡された袋の重量感には懐かしいものを感じて強く抱き締めた。 これは、刀だ。 あの時。 桜の鬼になる筈だった男の形見と言って過言ではない。 桜の為に用意された力――― 「……俺は反対なんやけどな」 「……私自身で前から決めてたんだから、今さらでしょ」 間髪入れず桜は光晴の言葉に素っ気ない返しをする。 「あ――…、せやけど…」 「聞かない、今さらそんなの」 「頑固やなぁ……。それと、桜ちゃんは一旦結婚式場に行っとってくれんか……?」 どうやらこれ以上何を言っても聞く耳を持たれないと判断したのか困った風に光晴は、職員棟を指差して告げる。偵察をして欲しいと言うことだろう。 「……偵察する必要ある?」 「あるある!!華鬼をボコボコに出来る場所を探しとって!」 「……分かったわ」 無邪気に笑う光晴を見上げて、頭を撫でられながら小さく返事を返す。 「それと、俺ら庇護翼とはまだ別行動やから、花嫁……神無ちゃんは後から連れて行く。……出来る限りで危険の無いようしといてくれ」 小さく頷き、その場を後にした
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