序章

4/6
前へ
/72ページ
次へ
午前5時。 夏の終わった朝でも、その名残を残す9月の朝はとても早い。 昨夜はあの後に何とか寝ついて、数時間の短い睡眠をジリジリと耳障りな目覚まし時計に起こされた。 変な時間に一度起きたせいか、若干の空腹感がある。 その若干の空腹を抱えながら暑いというか、生暖かい布団から這い出ると そのまま背伸びをし ばさりと寝間着にしていた浴衣を床に落として冷蔵庫に手を掛けその中身を確認する、が。 ――――冷蔵庫の中身は水の入ったペットボトルしかない。 それを確認して 冷蔵庫を半ば乱暴に閉めると 「お腹減った……」 と、それだけ短く呟きを漏らす。 起きてからそう時間が経っていない頭の中は、思考が纏まらず蜘蛛の巣が張ったかのようにもやもやとしている。 纏まらぬ思考に苛立ちを覚えながらカーテンを開けると、まだ昇り切ってはいない朝日を見上げて少しだけ立ち眩みがした。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加