偶 然

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『貴方が面白いって思う小説 教えて下さい』 咲羅は 極めて平静を装って聞いた。 そんな咲羅を見て蘭丸は笑顔で答える。 『本当に 俺が面白いと思うもので良いんですか?』 そう言って本を並べていた手を休め立ち上がる。 蘭丸は 小説が並ぶ棚の前まで行くと迷わずに一冊の本を手に取った。 そして咲羅に手渡す。 『俺のお薦めは これかな。 小説には人それぞれ好みがあるから気に入ってもらえるかは別として 面白い話だと思いますよ』 咲羅の手には 少し厚めで鮮やかな桃色の表紙をした本が乗せられていた。 『じゃ これ買ってこうかな』 『ありがとうございます。 良かったら感想きかせて下さいね』 蘭丸の笑顔に咲羅の心中は穏やかではなかった。 何で こんなにイライラさせるんだろう…。 『もちろん。 また逢いにきます』 咲羅の言葉と笑顔に 蘭丸の頬が かすかに赤く染まる。 接点が一つ できた。
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