偶 然

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蘭丸が咲羅に勧めた本は 鮮やかなまでに純粋な桃色をしていた。 その純粋さが また咲羅を苛立たしくさせる。 咲羅は 鞄を片付けるとベッドに横になり早速 読み始める。 少しでも早く読み終えて また蘭丸に逢わなければ…。 やっと出来た接点を無駄には出来ない。 ちゃんと感想も言えないと変に思われる。 だから 適当になんて読んではダメ。 それは 一人の少女を想い続ける少年の話だった。 どこにでもあるような恋物語。 自分だったら まず買わないな…。 ページをめくりながら 咲羅は思った。 その時 玄関のドアが開く音がした。 そして 可愛い幼げな母親の声。 『ただいまぁ』 それを聞いて咲羅は 思わず笑いが漏れる。 自分の母親ながら語尾が伸びてしまうところが何とも可愛い。
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