偶 然

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咲羅は 一人 本屋で立ち読みをしていた。 読んでいるのは 他愛ないファッション雑誌。 別に読むものなど関係ないのだ。 咲羅の目当ては 本屋で働いている一人の少年なのだから。 彼は今も しきりに新刊の小説を棚に並べている。 雑誌ごしに彼を見つめる。 一言で言えば整った顔立ちをしていた。 綺麗な二重だが 切れ長の目が印象的だ。 髪もサラサラで 時折 目にかかる前髪が幼いようで色っぽい。 男っぽいというよりは 可愛いという顔立ちだ。 そして彼の胸元の名札には『沢田』の文字。 あれが 沢田 蘭丸…。 やっと見つけた…。 後は 偶然を装って彼に近づけばいい…。 お前の父親から もらった この容姿に 引っかかるだろうか…。 咲羅は こみあげてくる笑いを必死にこらえる。
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