17人が本棚に入れています
本棚に追加
雑誌を棚に返すと 咲羅の足は蘭丸の方へと向いていた。
彼に近付きながら色んな事を考える。
笑って ちょっと優しくしてやれば お前だって他の男と同じ…。
『すいません』
咲羅が話し掛けると蘭丸は『はい』と笑顔で振り向いた。
遠くで見るよりも ずっと 整った顔立ち。
でも 私とは似ていない…。
直感的に咲羅は思った。
これなら 気付かれる事は まずないだろう…。
咲羅の中で 作り上げられてきた計画が今 始まろうとしていた。
最後まで ぬかりなく…。
咲羅は 何度も心の中で繰り返す。
『今 並べてるのって新刊の小説ですよね?
私 最近 小説にハマッてるんですけど 種類が豊富だから どれを選んだらいいのか分からなくて…。
良かったら おすすめの小説とか教えてもらえないですか?』
そういって蘭丸の隣に しゃがみ笑顔を向ける。
『そうなんですか。
オレも好きなんですよ 小説。
どんなものが お好みなんですか?
オレの知ってる範囲で良ければ いくらでも教えますよ』
男の人にしては 少し高めのボーイソプラノ。
でも それが蘭丸の外見にはピッタリで 一つの魅力のようにさえ思えた。
咲羅に向けられる笑顔も 無邪気で屈託ない。
咲羅には それがイライラして仕方なかった。
何不自由なく幸せな家庭で育った証…。
最初のコメントを投稿しよう!