Chapter 零 

3/3

57人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「……動くなよ」 彼の言葉が、その氷のような視線と共に、私の脳に冷たく緩やかに流れ込んでくる。 「……如月君、」 言いたい事も、訊きたい事も、あった。 だけど。 「動けば……撃つ」 彼が、ゆっくりと引き金に指を掛けたりなんてするから。 私はまた、言葉を紡ぐタイミングを逃してしまった。 何処からかサイレンの音が聞こえてくる。 シーリングファンが回っている。 誰かが啜り泣いている。 開かれた扉の向こうの窓から見える空は青かった。 ……あぁ、今日は本当に蝉がよく鳴いている。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加