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「……動くなよ」
彼の言葉が、その氷のような視線と共に、私の脳に冷たく緩やかに流れ込んでくる。
「……如月君、」
言いたい事も、訊きたい事も、あった。
だけど。
「動けば……撃つ」
彼が、ゆっくりと引き金に指を掛けたりなんてするから。
私はまた、言葉を紡ぐタイミングを逃してしまった。
何処からかサイレンの音が聞こえてくる。
シーリングファンが回っている。
誰かが啜り泣いている。
開かれた扉の向こうの窓から見える空は青かった。
……あぁ、今日は本当に蝉がよく鳴いている。
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