24人が本棚に入れています
本棚に追加
宮下より先に、大きな声で会話をしている学生風の2人組が、メロウデイの自動ドアを開けた。
斜め町で夜通し遊んで、ここで水分の補給などをして、これから地下鉄に乗って家路につこうという自由な境遇の人達であろう。
千鳥足とまではいかないが、布地のスニーカーの底がベージュのセラミックタイルの上で、ペタペタと行儀悪く動いている。
「メロウデイとか超マイナーじゃん。写真 撮っちゃおう!」
布地のスニーカーのかたわれがスマートフォンのカメラを使おうとしている。
もう1人の方は迷わずにレジの前に進み、トイレを借りるという事を、長身の若い店員に告げた。
(‥‥‥マイナーだよなぁ)
ドアを入ってすぐの宮下は立ち止まり、そこで、ガラガラの店内を見渡した。
先週の土曜日に高校の同窓会があった。
現在の仕事を何回もきかれて、何回もふにゃふにゃとした誤魔化し笑いをした。
早朝のレジに立つ、夜勤スタッフの蛭川が冷たい目で宮下を見ている。
「おはよう蛭川くん。お疲れ様です」
「‥‥‥」
蛭川はいつも、宮下の挨拶には応えない。
〈メロウデイ斜め町店〉の1日は、大概こんな感じで始まる。
ほぼほぼに広い売り場。
時々、国道からのクラクションの音が聞こえる。
最初のコメントを投稿しよう!