みどりサン、泣いちゃだめだよ

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それにしてもどうだろう。 棚に置かれた商品という商品が、全て綺麗に並べられている。 宮下はワザと事務所へのルートを遠回りして、雑誌棚の裏やATMの機械の脇など、普通は掃除の手の行き届かない場所を見た。 視力が弱いので、しゃがんで首を伸ばす。 わざわざ確認する事でもなかった。そこは何時もの様に丁寧に掃除がされている場所だから。 (蛭川君は、ちゃんと休憩をとっているんだろうか‥‥) 〈メロウデイ斜め町店〉は、あまり売り上げの高い店では無いから、人件費削減の為に、土日の夜勤スタッフは去年の秋から1人だけ。 今日は月曜日の朝だから、夜勤スタッフ蛭川は、勿論これらの仕事を1人でこなしていることになる。 以前 宮下は、蛭川が身内の不幸で急な休みをとった時に、1人夜勤というものを始めて経験した。 店内の掃除は中途半端に終わり、深夜に納品された菓子類の陳列も完了させられずに昼勤のスタッフに呆れられた。 雑誌コーナーの突き当たりを右に曲がる。 チラリとレジを振り返ると、蛭川が怒った様な顔をしてファーストフード(FF)を保温機に並べている。 宮下は肩をすぼめて、事務所兼スタッフルームに向かった。
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