みどりサン、泣いちゃだめだよ

7/13
前へ
/13ページ
次へ
「ん? 中々イケるじゃん」 「ふん? なるほど。オススメするだけはあるね」 学生風の2人組は、自動ドアが閉まる前に、揚げたてのメロチキにかぶりついた。 「私もメロチキは美味しいと思います」 そう言って宮下の前に納品伝票を置いた配送センターの運転手さんは、ニコニコしている。 宮下がここで店長を始めた2年前から、ほぼ毎日ニコニコしながら1便の品物を運んでいる。 「今日は少し多めの発注ですね」 検収印の押された伝票を3つにたたんで、運転手さんはなおもニコニコ顔。 クスリと笑いながらみどりサンがレジ中から売り場に出て、検品機を右手でクルリと回した宮下が後に続く。 「また夜便の発注を飛ばしちゃったんですよ。ほら、お弁当の棚とかガラガラ」 運転手サンがチラリと見たそこは、なるほどガラガラ。 「ハハハ。店長、気をつけて下さいよ。南東京営業所の新しいSVは、相当 厳しい人だって評判ですよ」 運転手サンは肩をすぼめる仕草をして、入り口のドアへ向かった。 メロウデイ斜め町店。 朝便の品出しから、宮下の忙しい1日が始まる。 「頑張りましょうね、店長!」 宮下が検品を終えたおむすびを、みどりサンが棚に並べる。 「頑張りますよ、そりゃあ‥」 新任のSVから昨日送られて来たファックスの文面を、宮下は嫌な気持ちで思い出した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加