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包まれた手から伝わる千尋さんのあたたかさ。
「歌絵と出会ったのは偶然なんかじゃない。出会うべくして出会った。運命だと信じてる」
「…っう、…うぅ」
どんどん溢れて頬を濡らす涙。嗚咽が漏れる。
頬をつたって顎まで流れた涙を千尋さんが指で拭う。
「だからこそ今、俺達がここにいるんだよ。『夫婦』という新しい形になって。これからは『家族』になる。完成はされていない。2人で…いや、これから増えていく新しい家族と一緒に成長していくんだ」
嗚咽を堪えている為に返事ができない代わりにコクコクと頷く。
「歌絵?」
名前を呼ばれて俯いていた顔を上げる。腫れぼったい目。涙で歪む視界に千尋さんの優しい顔。
「これから先も、俺はずっと歌絵を愛して守っていくことができるんだ。こんなに喜ばしいことはないよ?
――歌絵と夫婦になれたことを誇りに思う」
……涙のせいなのか、千尋さんの目も滲んでいるように見える。
「過去と未来。どちらも俺達には必要なものだってこと。そう言いたかったんだ。だから…」
私の左手を自分の手に乗せて、ジッと見つめる。
「これは一緒につけてね」
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