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もし、今が式の最中じゃなかったら。 皆の前じゃなかったら。 大声をあげて、泣いて、千尋さんに抱きつきたい。 それぐらい嬉しかった。 重ねづけするタイプのこの指輪。 婚約指輪をくれた時から、その先のことまで考えてくれてたのかな? って思ったら、すごく切なくて、堪らなく愛しくて あぁ、私ってこんなに千尋さんに想われていたんだなぁ。 って、今更ながらしみじみと実感した。 「千尋さん。ありがとう。ずっとずっと、大切にしますね。指輪も…千尋さんも」 涙を拭いて、今できる最高の笑顔で千尋さんに笑いかけると、嬉しそうに微笑んで頷いてくれた。 ――今度は私が千尋さんの指に指輪をはめる。 千尋さんが用意してくれた『夫婦の証』 2人の『未来』を約束した指輪。 私達の指に光るそれは他のどんな物よりも美しく、輝いて見えた。
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