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姫「さあ、勇者様。王国に帰りましょう。皆にこの事を知らせなければ…」
勇者「姫!」
姫様は瓦礫の山から降りようとするが、途中でよろけて、僕は慌てて姫を支えた。
姫「ありがとうございます。」
姫様はしっかりと立って僕にお礼を言う。この時、僕は姫様の目をハッキリと見た。姫様は綺麗な黒髪に瞳は焔のように紅に染まっていた。
あれ?なんだろう?胸の奥が温かい…
姫「勇者様?いかがいたしました?お顔が赤いですよ?」
姫様はそう言って僕に花の様に可憐な笑顔を見せた。
勇者「い、いえ!なんでもありません!さぁ!帰りましょう、王様が待っています!」
僕は姫様が転ばないように所謂お姫さま抱っこをして瓦礫を降りて行った。
「やあ、勇者君…魔王は倒せたようだね…姫様も御無事で良かった。」
瓦礫を降りると、砂ぼこりで汚れた若草色のローブを着た男が瓦礫から出てきて僕達に声をかけた。
勇者「ベル!生きていたのかい!?良かった…君だけでも生きていてくれて…」
ベルは僕と一緒に旅をしてくれた王宮魔導師でその魔法は攻撃、回復共に僕らの旅には不可欠な存在だ。
姫「ベル。貴方も勇者様と来ていたのですね。」
ベル「はい。勇者君、少し待ってくれないか?転移用の魔法陣を描くよ。」
ベルは息を整えると、瓦礫から離れて開けた場所で何時も持っている杖を腰のベルトから外して地面に突き立てると、地面に薄い光を放つ魔法陣が現れ、魔法陣の中心からシンプルなドアが現れた。
転移とは、術者があらかじめ描いてある魔法陣同士の空間を繋いで移動する事で。この魔法陣を使える人間はベルを入れて三人しかいない。
ベル「さあ、城に帰りましょう。」
ベルがドアを開けると、ドアの向こうには、城下町にあるベルの自宅の本棚が見えた。
勇者「ああ。」
姫「はい。」
この時、姫様の手は僕の手を握ったまま、僕達はドアをくぐった。
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