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ららら……らら……
私の役目は音を奏でること。
今日の貴方は幸せですか?
***
私が奏でるこの音は貴方と私の思い出の音楽。
貴方が好きな、音楽。
私を家族にしてくれた理由。
私と貴方が出会った日、私は貴方に役目を貰った。
それは毎日貴方に音楽を奏でること。
私は貴方を大切に思うようになりました。
幼かった貴方は、私を叩いたりする時もありましたね。
でも、私は貴方のために音を奏でる。
貴方に認めてもらいたくて。
貴方が怪我をして、苛立ちながら帰ってきた時、私にはどうして良いのか解りませんでした。
私は貴方に音を届けることしか知らなかったから。
貴方の恋が叶った時、私は寂しく感じました。
あんなに嬉しそうな貴方の顔を見て、嬉しい筈なのに……。
貴方に新しい家族ができると私は音を届けられなくなりました。
貴方に、忘れられてしまったから。
この悲しみは、なんなのですか?
この痛みは、一体なんなんなのです?
これが、「こころ」なのですか?
ねぇ、誰か教えて?
私の主人だった「貴方」はいなくなりましたね……。
私をおいて、みんな、逝ってしまいました。
私は一人で、謡えぬまま、この家に取り残されました。
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