1章

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 いっつも顔が上がらない。いや、顔は上がっているのだが、こう、彼女には勝てない。っていうのがいつもだ。今日こそちょっと反抗してみようかな。 「あのさ、あんまり暴力すると、アイス、買ってあげないけど」 「え、あ。…………」  少しだけ朱希は戸惑う。反抗は成功。なのだろうか。分からないけど。朱希はうんと考えてから、何かひらめいたらしくて閉じていた口を突発的に開けた。 「いいよ、化学教えてあげないし。ってか今日はマモに頼むつもりだったし、別にあんたじゃなくていいけど」  強い。この子強い!そこまで思考が回るならば、鼻を打撃したら痛いということまで思考を回転してほしかった! 「いいよ、僕が奢る。バイト代も使う術無いし。それくらいならいい」 「んーー、ありがとう」  彼女の笑顔には毎回黒星ばかり取っている。だめだ。勝てない。  結局朱希は上機嫌になってまた廊下に出ていく。木村さんもいつもの事だと分かっていながらも、大丈夫?と心配してくれて、これまた少し嬉しいなって思ったり。  掃除箱から塵取りを取りに行くと、ちょうど真佳も廊下から返ってくる。そういえばいつもより早い。と思ったら息を切らしている。本当に、いつも何をやっているのだろうか。って、廊下を覗けば一発なのだが。よし、明日は見てみよう。
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