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「あ……あ…―――――」
声に出してみるが、自分はおかしかった。
体もおかしい。そして、精神面でもおかしい事は分かっているのだ。
すべてか夢の中かのように思える。現実も、そして今までの記憶ですらあれは夢だったのだろうと思うのだ。
いや、それも何か違う。自分の記憶は今『 』の中だ。しかし『 』は無。ぼんやりとした意識は回復の前兆すら見せない。
ざわめきは一層増していく。女性。男性。みんな知らない声だった。一瞬で思う恐怖に、たぶん自分は脅えていたのだと思う。
「××さん、××××さん!!」
それは確定して女性の声だった。声からしてきっと2~30代の高めの女性の声だった。
しかし彼女が言っている名前を自分は知らない。とはいえば今自分は『 』の中に居るのだから、何も分からなくて当たり前なのだけれども。なんて開き直ってみる。
「××さん、聞こえますか?」
聞こえてはいた。しかしそれに反応するほどの体力も精神力もなく、ただ淡々と周りの会話だとかを「効果音」のように耳に入れていた。
「誰……―――」
自分が喋ると周りから歓声が上がる。しかし自分は不機嫌にその情景を目に浮かべる。不可解なことに、自分がこんなにも辛い思いをしているのに、周りの人間は喜んでいるらしい。理不尽だ。
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