0章

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結局『 』は何も理解できずに終わる。 記憶喪失だと漠然と言われても、困る。 真白い病院に、何人もの医師やら看護師やらが居た。そんなことをぼんやりと覚えている。実験台のモルモットはこんな気分なんだろうな、なんて意味もなく考えて、それからもう一度眠りに付くことにした。 自分がなぜ『 』と一緒に居ないといけないのかも分からないし、今現在が夢の最中のようにしか思えない。どんなに首を傾げても頭には出てくるよりも、環境からするものを吸収しようとしているだけな気がしてきた。 夢だったら幸せだなぁって思ったのだけれども、そういう都合のいいように世界は回ってない。みんなと平等にもなれない。そもそもこれを夢じゃないと確定できるのならば、神なんて要らないし、それだったら記憶喪失にならないように運命を作ってほしいものだ。 と、そこまで考えたが結局自分は神とか確信の無いものに頼っているくせに、自分への確信をその曖昧な神に求めている。それでもって最終的には確証が求められないから神を信じない。曖昧模糊で矛盾、というものだろう。  そうして開けられた窓の外から、柔らかな風が流れ込んだ。
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