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それはまるで、自分が望んでいたかのような、夢の時間でしかなかった。というか、夢だ。ふわふわと浮かんだ感情の中で、何か知らないものとの戦闘になんとなく奇声を発していた気がする。
まあそれは結局は夢。妄想の一部でしかないのだけれども。
「……織……綾織!」
ガタンと椅子が自分の足元から音を鳴らす。やったのは自分だ。気が付けば教室がこれまでに感じたことの無いほどに、しんと静まり返っている。これは珍しい。
しかしながらそれはほとんど問題ではなくて、黒板に板書された白い文字とカラフルな図形で自分は思考回路という回線をショートさせていた。
今思えば最初から起きているべきだったし、最悪なタイミングで見つかることもなかった。
嗚呼これは厄介だ。一番嫌いな場所で当たってしまった。
「綾織(あやおり)、頭馴らしにこの問題を黒板で答えろ」
「え……」
鬼畜である。
分からないのを分かっていて、恥でもかかせたいのかこの先生は。心の中での深いため息。残念ながらそれに対抗できるほどの勇気は持ち合わせていない。
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