0人が本棚に入れています
本棚に追加
夏の入道雲がゆっくりと行進しているのが恨めしい。
前の席の親友が、腹を抱えて笑っているのも恨めしい。
どうしたものかと少しばかり考えた。
「先生、分からないです」
「まぁそうだろうなぁ」
嫌みか、こいつは。と、思いながらも口には出さない。それが俺クオリティー。よしよし、俺いい子。
「じゃあ変わりに木村……」
飛び火して、クラスメイトに渡る。彼女も眠かったのか、そんな半ば寝ている瞳をちらりと向ける。健気そうな瞳に自分はちょっと罪悪感。
結局立ち上がったのは左に3つもズレた席の木村さん。自分は席から立つこともなく、ただ木村さんが板書していくのを淡々と見ていっていた。実際その内容を覚えていたかと言えば嘘になる。水は耳に入ったら通り抜けることは無いが、言葉は耳の右から入って左に流れていく。こんなもの将来の役に立ちそうだとも思わない。
というのが中学校までの考えであって、行きたい大学だとかを考えると化学も悪くない授業だと思える。
最初のコメントを投稿しよう!