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その後麗奈は、一族の血筋を裏切ることなく、すくすくと逞しく成長していく。
武術と剣術の指南役に千里が、女性らしく育って欲しいとの思いから、礼儀や礼節、家事全般の指南役に凜が務め、また桁外れに高い魔力を生かす為、魔法や法力専門の初等部に入学させた。
初等部二年の歳には、市にある全ての剣術道場を破り、麗奈の右に出るものはいなくなっていた。当時ついたあだ名が、【件の道場破り】である。
しかしこの見事な成長をよそに、密かに抱いていた凜の不安が的中してしまう。
ふとしたきっかけが原因で、麗奈は自分の生い立ちを知り、戦争の出兵を決意する。
当然ながら凜は猛反対、この場で四肢をもいででも止めるという言葉に麗奈は反発し、家を出ていってしまう。
絶望にうちひしがれた凜を見て、千里は
「元を正せば私たちが招いたこと」と、
凜を説得、ならばせめて力になってやろうと、麗奈の短刀と鉱石を凜が研究、解析し、それをもとに千里の【太古の大錬金術】で、一振りの刀を拵えた。
これが後の世界五大名刀の一つ【秘刀・めちゃ丸】である。
めちゃ丸を携えた千里は、出兵を控えた魔人の詰所に出向き、麗奈に「貴女ならば、
この刀を使いこなせるはず」と麗奈に託し、また、これは誰にも内緒ねと、「相手の土俵に立ち、かつ勝利することは、どんな美酒でも酩酊し得ない」と耳打ち、戦場に於いての魔法の一切を麗奈に禁じさせ(千里の制約魔法により)、その夜、麗奈の出兵を二人で祝った。
麗奈が、10歳の時である。
その2年後、過酷な特殊訓練を受けた麗奈は、【人間駆逐作戦】に参戦、これを初陣とした。(リオの章参照)。
初陣を勝利で飾った麗奈は、その実力と功績を買われ、そのまま一団に残留。一時的に解体された軍の盟友達の若き師団長となり、数々の戦禍をくぐり抜けていった。
数年後、いくつもの勲章と【軍神英雄】という現位を手に、麗奈は凱旋帰国。学友や近隣住民から大いに祝福され、一時、市内は宴一色に染まった。
その中で凜は、勲章や現位よりも麗奈の無事を心から喜び、また千里は、「酔えども酔えども我酔わず、酩酊たるは人の血の華ぞ」と、麗奈に抱きつきながら、恍惚としていたという。
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