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『私は優しいお姉ちゃんの子どもになりたかった……でも、どんなにそう願っても…ちっとも生まれ変われない……女の子を授からなかったから…お姉ちゃんの血を受け継ぐ女の子さえ出来れば…私は生まれ変われると…そう思って待っていたのに』
少女の表情はまた急変し、ギリギリと歯ぎしりをしながら憎々しげに私を見下ろした。
『やっと曾孫に女の子ができた。その子は“清子”と名付けられ、お姉ちゃんの愛を一身に受けた。私がそそがれるべき…そそがれるはずだった、私だけのお姉ちゃんの愛を…』
少女は可笑しそうに『クックッ』と笑い、今までで一番恐ろしい顔をしながら、私の顔を小さな両手で包み込んだ。
『お姉ちゃんが亡くなった日、私がお姉ちゃんに愛された“清子”になろうって決めた。だってお姉ちゃんはもういない…私の骨もお棺に入れられた…誰ももう私のこと…わからないもん…また、いなかった子にされちゃう…』
(そんな…いや!誰か…)
恐怖で一刻も早く逃げ出したいのに、体はいっこうに動かず、冷たい手が頬を撫で、見下ろす少女から私の顔にポタリポタリと唇の血が落ちてくる。
少女にはもう、こどもらしい可愛らしさも、愛おしく感じた“清子”の面影など微塵もない。
暗がりの中に見えるのは、憎しみ…悲しみ…恨み…
『無駄だよ…何もできないよ…清子自身を弱らせてあるから…結構…時間かかっちゃった……ふふふ…ごめんね………最近は…ずっと…頭…痛かったでしょ?』
必死に首を振り体を動かそうと抵抗する私に、少女は優しく言った。
『ねえ…それじゃあもう、あなたの体…私……もらうね…』
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