ねえ……

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(ここは…どこ?) 遠のいた意識がはっきりした時、私は不思議な場所にいた。 『あなたは私の中にいるのよ。清子』 (どういう…こと?) 私の声がどこからともなく響いてきた。 『あなたは、私の目を通して見ることも、耳を通して聞くことも出来る。でもね、私の中にいるの。もうあなたの体は私のもの』 (い…いや、いや!出して!私は私よ…。出して!) 両手を振り上げ、ドンドンと叩こうとするけれど、透明なケースに閉じ込められているように、出ることも、ましてや自分の体を自由にすることも出来ない。 『おはよう。お母さん』 「あら、おはよう。顔色いいわね」 (助けて、お母さん。私はここよ!お母さん) 私になった少女は、いつもの朝のように母に声を掛けた。 『頭痛治ったのよ』 「そう…よかったわね。今日お曾おばあちゃんの命日だから…きっとおばあちゃんが助けてくれたのね」 母は嬉しそうに目を潤ませて笑っている。 (違う!姿は私だけど…私じゃないの!お母さん!) 『私、おばあちゃん大好きだったからそうかも。お母さんにもいっぱい心配かけちゃった…ごめんね。私…優しいお母さんのこどもで良かった。ありがとう』 偽物の私は、しおらしいセリフを白々しく言ってのけた。 「ば…バカね…親がこどもを心配するの当たり前でしょ。良かったね…あんなに痛がってたもんね…」 母は口を手で押さえ、泣いている。 偽物の気持ちは、私にはハッキリとわかる。 この状況が馬鹿らしく、どうしようもないほど可笑しくてたまらないと思っていることを… (騙されちゃダメ!お母さん!そいつは偽物なのよ。本当の私はここよ。ねえ…!!) ーおわりー
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