あたしの愛犬

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堪えられなくなってあたしはその場にしゃがみ込んだ。 あぁ最悪。 よりによってなんで今? 亜子はどこにいるのかなぁ ていうかもう立ってるのもしんどいよ。 冷や汗がやばいよ。 なんかくらくらする。 はぁ、もう… 神様ほんの少しだけでいいから痛みを緩和させてください…… ――バサ 朦朧とする意識の中降りかかった、デジャヴ。 「………」 またジャージ… 誰よもうっ 空気読めぇっっ 無反応を決めつつ心の中で悪態をつきまくる。 そんなあたしの頭上、不意に静かな声が落とされた。 「何してんの」 「………ぇ…」 聞き覚えのあるその声に、無造作に被せられたジャージを掴んで顔を上げる。 爽太があたしを見下ろしていた。 「……そ、た…」 言葉を詰まらすあたしに構わず彼は、両脇に手を入れゆっくりと立ち上がらせる。 「歩けるか?」 「……う、ん」 「分かった」 「キャ…!!」 突然体が浮く。 お姫様抱っこをされていた。 「そっ爽太!!」 気がつけば結構な数の瞳があたし達に視線を注いでいた。 顔を真っ赤にして喚く。 「やだ、おろして!」 「なんで?歩けないんだろ」 「歩けるって言っ」 「どこが!」 ビクリ、と強張り押し黙る。 爽太はズルい。 いつもあたしに甘い癖に、こんな時だけ一丁前に怒鳴ったり。 「そんな顔で強がんな」 「………」 「腹いたいんだろ」 「………うん」
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