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「だって爽太に会いたくないんだもん!」
シン、と一瞬、あたしたちの居る空間が静まり返ったのを感じた。
ほんと一瞬だけだったけど。
つかの間の後、陽介の口が開かれる。
「……なんで?」
「…く、苦しいから。そばに居ると苦しい。声すら聴きたくない」
「爽太がなんかしたの?」
「し、したってか…ッ。智乃が、好きだからッ…」
「それはアイツが悪いの?」
少し離れた位置から。
陽介は、ベッドの上の妹を見下ろして。
その目は少し、冷めている。
「……わ……悪くない、よ…」
「うん」
「………」
「何も悪いことしてないのにダイスキなお前に避けられるアイツは、可哀想だな」
そんな、こと。
言われなくても、ワカッテル
「…だって……」
「誰もお前を責めないよ。でもこれだけ解っとけ」
耳に降る氷のように冷たい声に、背中の痕が疼いた。
「被害者は爽太だ。お前じゃない」
ーー・・ッ。
目を、閉じる。
涙が流れた。
そうだったのね。
7年前のあの日あたしは“被害者”になった。
だけど今、あたしは正真正銘の“加害者”。
いやむしろ、7年前に被害者となったと同時にあたしは、加害者とも、なり果てていたのだ。
そのことに、今さら気付くなんて
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