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「美湖!」
一週間ぶりの教室で、一番にあたしの名を呼んだのは智乃だった。
「美湖ッ、もう大丈夫なの?」
飛びつくように駆けてきた彼女を誰もが凝視した。後ろ側の入り口付近で突っ立つあたしたちを、皆がわざわざ振り返って見ている。
あたしも、その勢いにおされ一歩後ずさってしまうほど。
目の端で亜子と夏芽がこちらに歩いてくるのを見ながら答える。
「…う、うん。もう平気だよ」
「良かった。すごく心配してたの。だって一週間も休むから」
「ごめんね、ちょっと、体調が悪くって。もう平気」
視線が気になってつい小声になってしまっていた。
いけない、と思った。
皆は、智乃と爽太が仲良しなのを最近、知ったばかりだ。まさかずっと前から仲良しだったなんて知る由もないし、こんな場面見られちゃうと智乃が爽太の為にあたしに取り入ってるように思われちゃう。
それはいやだった。
あたしが。
「でも良かった、来てくれて」
智乃が小さく笑った。
なんだか疲れたようなその笑みに引っかかる。
「美湖が居ないとつまらないし…」
「…え、ハハ……」
「ホントだよ」
狙ったように瞬時に切り替えられた真剣な表情にドキリとした。彼女はこうやってたまに年不相応なカオを見せるから、こわいんだ。
あたしはその瞳から目を逸らし、曖昧に笑った。
「…そんな、あたしなんか……智乃は爽太がいればそれでいいんでしょ」
あ。
言ってから後悔。
なんかコレ、厭味っぽいや。いや、そのものなのか。
あたし、無意識に、厭味なんて口にしちゃったんだ。
・・・あたしは彼女が好きなの、嫌いなの
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