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「あは、ほんと可笑しい。…普段から美湖のことばっかのくせにさ、」
「…」
「夢の中でも美湖を見てんだ」
「…え、」
「いつもいつも美湖美湖美湖美湖、」
ぼそぼそとこぼす智乃を凝視する。
その表情には既に笑顔など消え去っていた。
彼女は今自分がどんなカオをしているかわかっているんだろうか。
「そんなに好きなら自分のモノにしちゃえばいーじゃん!」
突然張り上げられた声にビクリと強張った。
ドクンと心臓が呼応する。
そんなあたしをとらえ、小首をかしげて見せる智乃。
「…そうでしょ?美湖も爽太君が好きだもんね?早い話じゃない、ね?」
「………そう、たは……智乃が好きだから」
「あはっ、それ、ほんとかなあ?」
「……」
「どうみたって私は美湖の二の次だよね」
視線を下げ自嘲気味に笑った彼女を見つめる。
手が震える。
「結局、爽太君を動かしてるのは美湖じゃない。美湖の言葉で、行動で、それに比例して爽太君の感情が左右する…」
「…」
「美湖が笑えば爽太君も笑うし、美湖が泣けば爽太君も泣くんだ」
「……そんな、大げさ、だよ」
「大げさ?」
また彼女の瞳があたしをとらえる。
今度は、泣きそうなその瞳で。
「大袈裟だって、本当に、そう思ってるの……?」
ーー・・だ、……って………
じゃあ、そうだねって、頷けば良かった……?
それで智乃は満足した?
あたしは?
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