被害者

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静かになった教室であたしは、その場に立ち尽くしたまま動けないでいた。 ちらりと、深い眠りにつく彼を見やる。 「………」 あたしは智乃が羨ましい。 だけど智乃はあたしが羨ましいと言う。 入れ替わることが出来ればいいのに。 そう思った。 バカげたことだけど、本気でそう思った。 そう出来ないことに腹立たしささえ覚えた。 だってそうすれば誰も傷つくことなんて無いのに。 あたしは、誰も傷付けなくて済むのに。 被害を受ける者は居なくなって、そして、被害を与える者も居なくなるのに。 「……被害者はあたしじゃない…」 そう。そうだよ。 イマ、傷付けられているのは爽太や智乃であって、あたしによって被害を受けているのは彼らであって、決してあたしなんかではない。 それなのに。 そなのにねぇどうして? あたしの心はズキズキと泣いている。 あたかも自分が傷付けられていて、被害者であると主張するかのように。 バカバカしいわ。醜いわ。 加害者のくせに。 傷ついたフリして。 被害者面して。 バカで稚拙で最低な女だわ、あたし。 こんなだから爽太はあたしを好きになんてなってくれないし、いつまでたっても割れ物注意なんだ。 じわ、 ーーダメッ 泣かない だってあたしは……ッ そう、だめ、慌てちゃだめなの 落ち着いて 一旦席に戻りましょう 心を落ち着けて、必要なら仮眠だって取ればいいよ、ね、美湖 だからお願い、泣かないで あたしは“被害者”なんかじゃないんだからー・・ .
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