172人が本棚に入れています
本棚に追加
静かになった教室であたしは、その場に立ち尽くしたまま動けないでいた。
ちらりと、深い眠りにつく彼を見やる。
「………」
あたしは智乃が羨ましい。
だけど智乃はあたしが羨ましいと言う。
入れ替わることが出来ればいいのに。
そう思った。
バカげたことだけど、本気でそう思った。
そう出来ないことに腹立たしささえ覚えた。
だってそうすれば誰も傷つくことなんて無いのに。
あたしは、誰も傷付けなくて済むのに。
被害を受ける者は居なくなって、そして、被害を与える者も居なくなるのに。
「……被害者はあたしじゃない…」
そう。そうだよ。
イマ、傷付けられているのは爽太や智乃であって、あたしによって被害を受けているのは彼らであって、決してあたしなんかではない。
それなのに。
そなのにねぇどうして?
あたしの心はズキズキと泣いている。
あたかも自分が傷付けられていて、被害者であると主張するかのように。
バカバカしいわ。醜いわ。
加害者のくせに。
傷ついたフリして。
被害者面して。
バカで稚拙で最低な女だわ、あたし。
こんなだから爽太はあたしを好きになんてなってくれないし、いつまでたっても割れ物注意なんだ。
じわ、
ーーダメッ
泣かない だってあたしは……ッ
そう、だめ、慌てちゃだめなの
落ち着いて
一旦席に戻りましょう
心を落ち着けて、必要なら仮眠だって取ればいいよ、ね、美湖
だからお願い、泣かないで
あたしは“被害者”なんかじゃないんだからー・・
.
最初のコメントを投稿しよう!