172人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーざわ
辺りの騒がしさに目が覚めた。
眠気眼をこすりながら視線を這わす。
午前の授業が終わったらしく昼食タイムに移っていた。
あたしいつの間に寝ちゃったんだろう。
ふと目がいくのは彼の席。
今日もあたしは彼の背中をさがす。
……しかし、いつもそこにあるはずの背中は無かった。
「美湖!」
不意に名前を呼ばれて視線を動かす。
爽太の席とは逆側の端っこで、夏芽と亜子が向かい合ってお弁当を食べていた。手招きをする夏芽に誘われて席を立つ。
「おはよー美湖」
「おはよう」
微笑む二人に同じように笑みを返す。
「おはよう」
「すっごい爆睡してたねー」
「あは…いつの間にか」
「びっくりしたよー、理科室から帰ってきたら爽太と美湖二人して爆睡なんだもん。ねえ亜子」
「驚いたわね」
「アハハ、ごめんねえ」
「ていうか後藤先生がさー…」
……そうえば、智乃もいないや。
いつもは自分の席でお弁当食べてるはずなのに。って、把握しちゃってる自分なんかキモいな…。
でもどこ行っちゃったんだろう。
なんで二人して居なくなるわけ?
…もしかして、二人で一緒に食べてるとか。屋上、とかで。
「岩下さんなら保健室よ」
不意に誰かがポツリとそう言った。
え?と目をしばたたかせたあたしを見て微笑んだのは、亜子だ。
「岩下さんなら、保健室。爽太は分からないけど…ごめんね」
「えっ、あっ…」
「ふふ、美湖ったら、考えてること顔に出過ぎなんだもん」
どもるあたしを見ながらクスクスと笑う亜子。
かああっと顔が熱くなるのを感じた。
「…ふ、ホント可愛いんだから」
「……あ、亜子って、エスパーだねっ」
「ぶッ!みっ美湖ってほんと天然ーー!!」
「夏芽米粒飛んだわよ」
「エッ」
お箸片手に口元を覆う夏芽。
亜子は気にする様子もなく丁寧におかずを口に運んだ。
ふ、と笑みが零れる。
楽しくて、可笑しくて、優しくてあったかい。
大好き。
ーーパチ
あたしは気合いを入れるように軽く自分の両頬を叩いてみた。
「では、あたしちょっと、行ってきます」
「おー、行ってらっしゃいなー」
元気な夏芽の声と
優しい亜子の笑顔
よっし。
充電まんたん!
.
最初のコメントを投稿しよう!