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「飯島美湖ちゃんッ」
「ーーッ!」
ぐるりと身を翻す。
脚が、勝手に、動いた。、
「ーあっ!」
息をするのも忘れるほどに全力で走った。
でもあたし、自分自身のことは一番分かってる。
運動音痴。
「待てよ!!」
背後から怒鳴り声が聞こえた。
距離からして追ってきているのが分かる。
助けて爽太
思わずに心でそう叫んだ
もしこの場に彼が居たらどうしてくれるだろうか。
あの人たち、きっと、殴られて、泣けばいいんだ。
多分爽太は、あたしのことになると、女だろうと手加減はあれど容赦はしない。
いつだったか。
小学生の頃。
あたしにちょっかいを出した上級生の女の子たちを爽太は殴った。
その時あたしは初めて彼に恐怖し泣いた。
約束してくれた。
もう誰も殴ったりしないからと。
爽太が初めて破ったあたしとの約束は、コレだったなあ。
いともアッサリ破られた。
『美湖はオレが守るよ』
初めて交わされた約束。
これだって、破られようとしている。
守れないなら約束だなんて言わないで欲しい。
わざわざ“約束”だと言葉にした分の重みを、忘れないで。
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