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「ーー智乃!!」
勢い良くドアを開けると同時に、大きな声で叫んだ。
もう何度も、あの日の暴行を受けた光景が脳を過ぎっていた。
もしも彼女が同じ目に遭っていたなら、あたしどうしよう。
爽太に、なんて言えばいいんだろうか。
「ー美湖っ?」
しかしそんなあたしの瞳に飛び込んできたのは、なんとも予想外な光景だった。
「………えっ」
片腕をねじり上げられ倒れているのは背の高い細身の女子生徒で、あの三人組の一人。
そんな彼女の腕をねじり上げてる人物は紛れもなく、智乃だった。
「………え?」
あたしはと言うともう、眼球がポロリと落っこちちゃうんじゃないかってくらいに大きく目を見開いて、口は半開きで、なんとも間抜けな顔ったら。
「えっえっ美湖っ?何どうしたのっ?」
女子生徒の背中を踏んづけていた足をぱっとおろして小さくはにかむ智乃。
あたしは言葉が出ない。
「……あの……何、して…」
「えっ?あっ、違うのっプロレスごっこ!アハハッ」
「………、」
アハハってあなた……
でもそっか、そう言えば、忘れてたや
「智乃って、強いんだったね」
「えっ」
「ほら、屋上でさ、」
「…あ、……やっぱ、家柄的にね」
少しだけ曇った笑顔にあっと口をつぐんだ。
そうだ。
その家柄で友達が出来なかったんだっけ…。
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