一方通行

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「ーー美湖」 目の前までやってきた智乃におびえ、ぎゅっと目をつむり俯いた。 肩が上がる。 殴られても仕方ないと思った。 「ごめんなさい……ッ」 「美湖、」 「ごめんなさいッ……」 「美湖ってば!」 じわりと涙がせり上がり、張る声が涙声に変わったとき、不意に、ガシリと強く両肩を掴まれた。 驚いて顔を上げる。 不安げな瞳が映った。 「美湖っ……」 「……ッ」 「泣かないでよ、私、怒ってないのに」 眉をハの字にさせた智乃の台詞に目を見張る。 そんなあたしの目尻に溜まった涙を白い指が拭った。 「別にいいの、美湖ならいいの」 「……ッ」 唇を噛み締める。 言葉の裏を考えてきゅうと胸が切なくなる。 あたしならいいってことは、 他の人ならヤだったってことで、 つまりはやっぱり、良くないってことなんだ。 「ごめんなさい……ッ」 「良いんだよお、隠し事はいつかバレるの、そう決まってるのよ」 「…ッ」 「それがバレた原因が美湖なら全然苦じゃない、むしろ嬉しい」 首を振る。 解らないよ、言ってる意味が、全然、わかんないよぅ 「美湖。私、嬉しかったの」 「……ウッ……」 「私のこと知っても嫌わないでいてくれて、すっごく嬉しかったんだもんっ」 下げた眉を上げて、今度は幼く笑った智乃。 「美湖は私と仲良くしてくれた初めての女の子だよっ。私、世界中の人が私をこわがったって、美湖が笑ってくれるなら平気」 「……ちの、…」 「だから泣かないで、美湖」 「………っ」 別に、彼女をこわがらない人なんてこの世にたくさん居ると思うの。 きっとあたしたちの同級生にだって居るわ。 こわがられることを懼れて閉じこもってしまったから、出逢えなかっただけ。 でもあたし思ったの。 智乃の一番になれて、良かったって、 心から嬉しいって、思ったの。
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