172人が本棚に入れています
本棚に追加
「ーー美湖」
目の前までやってきた智乃におびえ、ぎゅっと目をつむり俯いた。
肩が上がる。
殴られても仕方ないと思った。
「ごめんなさい……ッ」
「美湖、」
「ごめんなさいッ……」
「美湖ってば!」
じわりと涙がせり上がり、張る声が涙声に変わったとき、不意に、ガシリと強く両肩を掴まれた。
驚いて顔を上げる。
不安げな瞳が映った。
「美湖っ……」
「……ッ」
「泣かないでよ、私、怒ってないのに」
眉をハの字にさせた智乃の台詞に目を見張る。
そんなあたしの目尻に溜まった涙を白い指が拭った。
「別にいいの、美湖ならいいの」
「……ッ」
唇を噛み締める。
言葉の裏を考えてきゅうと胸が切なくなる。
あたしならいいってことは、
他の人ならヤだったってことで、
つまりはやっぱり、良くないってことなんだ。
「ごめんなさい……ッ」
「良いんだよお、隠し事はいつかバレるの、そう決まってるのよ」
「…ッ」
「それがバレた原因が美湖なら全然苦じゃない、むしろ嬉しい」
首を振る。
解らないよ、言ってる意味が、全然、わかんないよぅ
「美湖。私、嬉しかったの」
「……ウッ……」
「私のこと知っても嫌わないでいてくれて、すっごく嬉しかったんだもんっ」
下げた眉を上げて、今度は幼く笑った智乃。
「美湖は私と仲良くしてくれた初めての女の子だよっ。私、世界中の人が私をこわがったって、美湖が笑ってくれるなら平気」
「……ちの、…」
「だから泣かないで、美湖」
「………っ」
別に、彼女をこわがらない人なんてこの世にたくさん居ると思うの。
きっとあたしたちの同級生にだって居るわ。
こわがられることを懼れて閉じこもってしまったから、出逢えなかっただけ。
でもあたし思ったの。
智乃の一番になれて、良かったって、
心から嬉しいって、思ったの。
最初のコメントを投稿しよう!