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ーガラガラ
他人から見ればちょっとワケの分からない場面に居合ってしまった女子生徒がぽかんとするなか、やっとと言っていいタイミングでそのドアは開かれた。
ハッと背後を振り返る。
あの二人のご到着だった。
「…はっ、チカ!?ナニこの光景!?」
開口一番にふくよかさんのユカはそう喚いた。
無表情でスッとドアの鍵を閉めたのはアイ。
「や……なんか、ちょっと脅すつもりで迫ったら意外と強くて」
「は!?強くてじゃねえよ!こんなガキ一人もボコれねえのかよ!」
片眉を下げて笑ったチカと呼ばれた女子生徒をユカが怒鳴りつけた。
ビクリと強張ったあたしの腕をそっと引いた智乃。
庇うように立ってくれる。
「…や、でもさ」
「オマエ無駄に図体デカいだけかよ!マジ使えねえ!」
「だったらアンタがヤればいいじゃん!」
笑顔を消して叫んだチカをユカはつり上げた眼で睨み付けた。
不意に掴まれていた腕が解放されたかと思うと、智乃はあたしから一歩遠ざかる。
そんな彼女を不思議に見上げた瞬間、
「上等だよ!」
喚いたユカが智乃の胸ぐらを掴み上げた。
しかし同時、その身体がガクリと傾き、落ちる。
ーどすん!
智乃が足を掛けたのだ。
鈍い音と共にユカは無様に地べたに倒れ込んだ。
言葉の出ないあたしをよそに、ぷっと小さい笑い声が漏れた。チカだ。
「だっさーい」
「……!」
ユカが目を剥く。
アイは無表情を決め込んでいるのか。
あたしはこの瞬間、所々に感じていた違和感がやっと拭えた気持ちになった。
なんだこの三人、別に友達でもなんでもないんだ。
ただ一緒に居るだけの関係。
なんてそんなことを思った、一瞬の隙を突いた出来事だった。
不意に立ち上がったユカに勢い良く腕を引かれ、あたしはまんまと捕まってしまったのだ。
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