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「智乃っごめんなさいっちのっ、なんでッ?!」
本当に、どうしていいか分からなかった。
いつも泣くのはあたしで、慰められるのがあたしで、だから本当に、分からなかったんだ。
「……あの」
ぽつりと口を挟もうとしたチカを智乃がキッと睨みつける。
「なんなおまえら!はよどっか行けよ!!」
「ーーあっ、はっはいっ、ごめんなさいッ」
「二度と美湖に近付くなよッ…!視界に入ってみぃッ……沈めたるからなァ!!」
チカは智乃の激しくコワいセリフを最後にそそくさと逃げるように保健室を出て行った。
その後をポカンと見つめながらあたしは酷く疲れを感じる。
「おまえらもッ…!はよイねや!…うぅッ…」
アイとユカをぴぴっと手で払うそぶりを見せる智乃に、何とも言えない笑みが漏れてしまう。
少しだけ慌てたようにアイが反応し、ユカのもとに片膝をつきさっさと立ち上がるよう促した。
やっとの思いというように立ち上がったユカを先に外に出し、続けてアイも出て行くのかと思いきや彼女は背を向けたまま小さな声でボソリと呟いた。
「飯島さん、あの時は、ごめん」
ーー!
反応を示したのは智乃の方だった。
「……あの時ってなに?」
「や、別に」
「ホントにごめん!」
とっさに誤魔化そうとしたのが多分裏目にでたと思う。そのまま走り出て行こうとしたアイの腕を智乃が引っつかんだ。
第2ラウンドだと、胸の内でそう思った。
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