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「あの時ってなによ」
「一週間まえ、」
「別に何も無いって、ねっ」
アイの言葉を遮り笑ったあたしに視線が移されて
「私に言えやんこと?」
「ーー……」
有無を言わせない表情と口調だった。
「……そ、んなことないけど」
「だから私たちがこの子に暴力奮ったことだよ!」
「ー!」
あちゃあ~~、
なんて、そんな可愛い表現使っちゃ怒られちゃうなー、て、でもそれくらいいっとかないと、ちょっと、コワイ……
「……暴力って、いつッ?」
「だからこないだ!一週間前!」
「美湖体調悪いて…ッ、ケガしてて来れへんかったん?!」
「…や、ケガ自体はそんな重傷じゃ、」
「だってあの日美湖知らんかって連絡来て、そんで居てたよって普通に連絡きて、だから安心、……だってそんなんしらんやん!」
「……ごめ、」
「アンタ何したん?!」
「だからっ、三人で囲って暴力奮ったのッ」
「リンチか!!」
「だからごめんって…!!」
「謝って済む問題と」
「ーーもういいよ!!」
渾身の、力で叫んだ。
シンと静まり返った一室。
一呼吸間を置いて口を開いたのはアイ。
「……本当に、ごめんね。飯島さん」
俯いていた顔を上げその瞳を見つめる。
コクンと頷いたあたしと同じように彼女も、涙目だった。
「…許すん?」
智乃の声がポツリと響く。
「赦されることやと思ってんの…ッ?」
「でももうケガも治るから」
「治ったらいいんッ?それでいいんッ?」
「だって傷は消えるんだッ!」
「ーー!」
あたしは、何年も経った今でも未だに背中の傷に脅かされている。
お風呂に入るときにごくたまに、鏡に映ったその痕を視界に入れてしまう。そんなときあたしは異常に疼いてしまう心臓といつも格闘だ。
あたしは、“傷痕”がコワくてたまらないんだ。
当時の恐怖も痛みすら、覚えていないというのに。
この脳に欠片さえの記憶が無くたって、身体が、心臓が、ソレをしっかり焼き付けている。
だったら例え一生その痛みや恐怖を覚えていようとも、その痕が消えてくれるならそれでいい。
その方がいい。
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