一方通行

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「……わかった」 俯いていたけれど、ふっと智乃の視線が逸れたのが分かった。 ゆるりと顔を上げる。 「…ごめん、美湖がいいって言ってるのに私が怒ってるって変な話だよね」 違和感を感じる。 そうか、発音が変わったんだ。 でもおかしいな、コッチがいつも通りなハズなのに。 「ねえ」 ポツリとこぼされた声に反応する。 智乃はこちらを見ない。 「あの二人はこのことちゃんと知ってるの?」 「…あ、夏芽と亜子?…もちろん知ってるよ」 「ふっ、そうだよね当たり前だよね」 笑ってるのに、なんだろうこの居心地の悪さは。 ーーキーンコーン 不意にチャイムが鳴り響いた。 休憩終了を示す音。 ハッとしたようにスピーカーを見上げたアイを智乃が見やる。 「あなたも早く友達のところに戻ったら」 アイが硬い表情で智乃を向いた。 「別に友達じゃない」 「……」 「私友達なんていないし」 見つめるあたしを彼女は一瞥する。 横で、声が降った。 「じゃあ私とおんなじだね」 「えっ…?」 間髪入れずに声を出したのはあたしだった。 見上げた視線を智乃は気付かないフリをして。 「チャイム鳴ったし、教室戻ろ」 言った彼女の腕をとった。 振り向かない。 「………ちの、」 「…」 何を言葉にすればいいのか分からなかった。 どう言えば上手くいくのか、 「……あたしと智乃って、友達じゃないの、かな」 「…」 やっと振り向いた智乃の目を見つめる。 「私たちって友達だったの?」 ーー・・。
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