一方通行

20/22
前へ
/251ページ
次へ
「爽太君ともっと近付きたいと思ったから美湖に近づいたんやで」 「…」 「ワタシ美湖が羨ましいわ、本間に。でもおんなじくらい、爽太君にあんなに想われてるアンタが妬ましい。ムカツクし、居なくなればいいって思う」 何も言わないあたしを彼女は再び見上げた。 色の無いその瞳に映るあたしは、どんな表情を見せているのだろうか。 「美湖、聞いてる?」 「…うん」 「……ま、そうゆうことやから」 立ち上がろうとした智乃にあたしはやっと声を掛ける。 「あたしはッ……!」 「…」 「………じゃあ、…全部、嘘……?」 何が、と呟く智乃。 「…教室で話したときとか、廊下で言ってくれたこととか、」 「…」 「今のセリフは…っ?」 息を吐いた彼女にズキンと胸が痛む。 「そんなん自分で考えや」 「…智乃っ」 「だからもっかい、ゆうでっ?ワタシはあんたを利用しようとしたの!」 「そんなのッ」 「そんなの構わないって!?」 遮られた台詞を呑み込む。 唇を噛み締めた。 ……『そんなの初めから解ってた』 知った上で彼女と関わりを持って、その上であたしはアナタを、智乃を、好きになったんだよぉ……ッ
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

172人が本棚に入れています
本棚に追加