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『ねぇようすけ、ソウタ、って、どうしてあんなにこっちに来るの?』
『なかよくしたいんじゃない』
『でもねようすけ、あたし、ソウタ、にがてだよ』
『…なんで?』
『…だってすっごく、…げんきっていうか、』
『なれなれしいよな』
『うん、それ』
『でもおまえは、だれにだってにがてじゃん』
『……』
『オトナリなんだし、なかよくしないわけには、いかないよ』
『あたしは、ようすけいがいは、いらないの』
『うん、でも、そうたはいいやつだよ』
『そんなの、しらない』
『でもおれだって、少しくらいはほかの人ともいてくれないと、』
『…え?』
『……そうたと、なかよくできるよ美湖なら』
ーー思えば、
この時あたしは陽介に、ものすごく遠まわしに突き放されたんじゃないだろうか
じっと我慢してくれていた兄の、一番初めの叫びがこれだったのでは
だけど当時のあたしはそんなことにはこれっぽっちも気付かずに。
しかし本能で感じ取っていたのは確か。
あたしが爽太との距離を縮め始めたのは、この後からだったから。
彼等二人との間には薄い壁があったように思う。
あたしには、踏み込めない、しかしごくごく薄い、壁が。
けれどその壁の存在にすら気付いていなかった、あの頃のあたしーー
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