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ーー
「プールに行こう!」
「やだよっ!」
それは、夏休みも中盤に差しかかった真夏の正午の出来事。
当たり前のように勝手に部屋へ通す親のことは許しても、いきなり下着姿になる親友のこの行為は許し難いと思う。
「なんでよっ?!」
「やだったらやだ!昨日電話でもゆったもん!絶対行かない!!」
ベッドの上でドデカいクッションを抱きながら膝を抱え込むあたしを、下着姿の夏芽は仁王立ちで見下ろす。
「ダメなの!6人そろって都合いい日はもう明日しかないの!」
「むりだよっ」
「あたしだってむり!もう水着も買っちゃったもん!ほらコレ!」
水着だったのかよソレ!
そりゃそうだよねそうでもない限り急に人んちで服を脱いだりなんかしないよね、いくら暑いからったって!
なんていうツッコミは脳内でおさめておいて、やっぱりあたしは強情に首を縦に振ってやらないのだ。
「亜子と三人で行けば良いじゃんっ。何回でも何十回でもっ」
「ばかーっ、このナイスバディを男共に見せびらかせなきゃいけないでしょー!」
「そんなことちっとも思ってないくせにーっ」
「思ってるよー!」
「嘘ぉっ!どうせ爽太と仲直りさせたいとか思ってるんでしょお!」
ーーバッ!!
「ーっ!」
ぴーぴー叫びまくるあたしの腕から急に、すっぽりとクッションが引き抜かれる。
びっくりして口をあんぐりさせたあたしの間抜け面に、夏芽の叱咤が浴びせられた。
「わかってんならいーかげん意地張んのやめな!!」
「ー・・っ!」
言葉を詰まらせたあたしの横に、彼女は取り上げたクッションを今度は自分が抱いて腰を下ろす。
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