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「わかるよ、あんたの気持ち」
落ち着いた声で呟いた夏芽を振り向かずに、あたしは黙って拗ねたように視線を下げた。
「顔を合わせりゃあの人らが両思いなの伝えなきゃいけないとかゆープレッシャーとかにね、押しつぶされそうになったりとかね?」
「……」
「あの子に対するクエスチョンとか、アイツに対する苛立ちとか、いろいろあると思うんだよ」
「…」
あの子、智乃に対する、クエスチョン。
結局あれからあたしたちはろくな会話どころか目すら合わせられていない。
本当の拒絶。
でもわからない。
どうしてもわからない。
何故こうなったのか。
そしてあたしは何故こんなにも傷ついている。
彼女の意図は
あたしの意図、は
「でもさ、いつまでもこのままでいいの?」
なま暖かい風邪がカーテンを揺らしている。
それに目を向けながら夏芽は優しく問いかけた。
「爽太と、このままズット喋れなくていいの?」
「……」
「嫌でしょ?」
いやだよ。
すごくいやだよ。
本当は今すぐにでも飛びつきに行きたいんだよ。
でも、でもじゃあ、爽太は?
「……爽太は、何もしないんだね」
「え?」
「夏芽たちは、あたしにばっかり言ってくるけど、じゃあ爽太は?」
「……」
「爽太は、あたしと仲直りするために何もしないの?しなくていいの?それとも、あたしなんかとはもう仲良くしたくないって、思ってるから、だから、」
「美湖」
上から被せるように呼ばれた名前。
夏芽の声が寂しそうだったから、俯いたまま、黙った。
「爽太が美湖と仲良くしたくないなんてあるわけ無いじゃん」
「……」
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