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「爽太には洋紀たちがちゃんと声かけてくれてる。でも爽太だっていっぱいいっぱいなんだよ。わかってるでしょ?美湖が、爽太を、拒絶したんじゃん。爽太が、傷つくのわかってて、美湖は、爽太のことよくわかってるから、だから、」
「…」
「だから、何に傷つくかも、解ってるから、」
「……」
「今一番怖くて不安で仕方ないの、爽太だよ。ソレ、美湖が一番解ってるよね」
唇を噛んだ。
涙が滲んだ。
そんなあたしを夏芽は横から抱き締めて、わしわしとさすった。
さっきとは一変した声色が耳元で聞こえる。
「う~~~、わかってるよ、美湖は悪くないよ、だってアイツがさぁ、他の女なんか好きになるからさぁっ」
「………、」
「大人しく美湖一筋でいろっつーのよねっ?」
「…、」
「アイツがバカなんだっ、乙女心なぁぁんも分かってない!大バカ者なんだよっ、ちょっとくらい痛い目みろってねっ」
くいっと涙を拭いて、ついでに鼻も啜って、「夏芽、」と小さく呟く。
彼女はぱっと体を離してあたしを見た。
「ごめんね」
「……えぇ、なにがよおっ?」
「あたし泣き虫で、意地っ張りで、手の掛かる子で、嫌になっちゃうよね」
「な、なんないなんない!何言ってんの、ばか!」
泣きそうな顔で夏芽は怒鳴った。
「美湖は消極的で恐がりで、人と接するのすっごく苦手だけど、素直で真面目で、それに根はすっごく明るくて、可愛くて、あたしらあんたと居るだけでちょー癒されてんだよ!」
「…夏芽」
「ほんとバカだね、ホント、ネガティブなんだからっ!」
「ごめんなさい、」
「いいよ!美湖が寂しがり屋なの分かってるから。ちゃんと思ったこと教えてね!その度にこーやって教えてあげるから、あたしらがどれだけあんたのこと大事かって!ね!」
「うん…っ」
嬉しくって笑みがこぼれたら、夏芽の表情もくしゃってゆるんだ。
ちょっとだけ照れくさくなって、えへへって、二人して頬を染めた。
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