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世間はお盆時。
13日から16日にかけて、ご先祖様の冥福をお祈りする時期、っていわれてるんだっけ?
ウチも行くよ、お墓参り。
でも今日は行かない。明日ね。
だって今日は、プールに行く日だから。
ーーブォーー・・
ガタンゴトンと揺れる電車の中、久しぶりに揃ったあたしたち6人は市内のプールランドを目指して壮絶な押しくら饅頭ごっこ中。
「……みこっ、へいき…?」
「………ん、…」
ぎゅむむっ、と人と人との間に挟まっているあたしに、同じようにぎゅううと挟まれている夏芽が声をかけてくれる。
チビなあたしを挟んでいるのはまた不運なことに背の高いおじさまたち。
辛うじて視界に入る窮屈そうに身を縮めている5人に視線を注ぎながら、人の波にさらわれて周囲を赤の他人のみに囲まれてしまった自分の不運さを呪った。
たった3駅離れた場所へ行くだけなのに、どうしてこんな死ぬ思いをしなきゃいけないんだと嘆く。
ヒトの匂いに気分が悪くなってくるし、いい加減クラリときたときやっと、扉の開く音がしてあたしは思わず涙ぐんだ。
「美湖~~っ、大丈夫だったかぁぁ」
ほんの少し青ざめた表情で俯くあたしの背中をわしわしとさするのは夏芽。
亜子がさり気なくあたしの肩から荷物を降ろしてくれる。
あたしは口元に手をあてながら僅かにこくんと頷いた。
でも正直みんなも、同じような疲れ果てた表情は隠しきれてないけどね。
「やっぱお盆はダメだね」
「だなー。帰りはもーちょいマシになってるといいけど」
浅いため息を吐いて洋紀がそう口にした。
あとに続いて爽太が応える。
意識しないフリをして、あたしはくいと顔を上げた。
「もう大丈夫。ごめんね、行こうか」
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