コンプレックス

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駅から徒歩10分足らずの場所にあるそのプールランドは、毎年夏になるとあたしたち6人の格好の遊び場になる。お金がかかるから頻繁にとはいかないけれど、なかなか愛用させていただいているのよね。 「あっち…」 ふいに誰に言うでもなくこぼされた陽介のセリフが、ジリジリと照りつける日差しを余計に強めたような気がして空を見上げた。 ピカッと光る太陽。 あぁ夏だな、と思った。 夏は嫌いじゃない。 イベント事がたくさんあるから思い出が多い。 海に川にプール。花火にお祭り、そのほかいろいろ。 でも本当は、春も秋も冬も、たくさんある。 みんなとの思い出。 爽太との、思い出。 今年の夏はまだ爽太と口を利いていなかった。 それもまた一つの思い出ね。 あんな年もあったね。って、笑い話になるかな。 なら別に、今の状況だって捨てたもんじゃないね、うん。 捨てたもんじゃない、よね………?
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