コンプレックス

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押しくら饅頭事件の次、本日2度目の事件は、無事プールランドに着いたところで発覚した。 時間を確認するため携帯をとバッグの中身をまさぐったとき、あたしはついにそれに気付いてしまったのだ。 「………水着がない」 ぽつりとこぼされたあたしの声を、そこに居たみんながキチンと聞いていた。 へ?と間の抜けた表情を見せてくれる。 「どうしよう、水着がないよ…」 「え、忘れちゃったの?」 ぽかんとした様子で問い掛けた夏芽にふるふると首を振る。 「あたしちゃんとかばんに入れたよ」 「ほんとに?」 「ほんとだよぉ、ねぇ陽介っ。あたし忘れ物ないかちゃんと確認したもんねぇっ?」 「うん」 「あらぁ、陽介君が言うならほんとだねえ」 おい!と突っ込みたくなる夏芽の台詞はこの際ムシで、あたしはふにゃりと肩を落とした。 そんなあたしに優しく微笑んだのは亜子。 「水着、売ってるじゃない」 …確かにランド内で販売してるけど…… 「買うお金ないよぉ」 「じゃあレンタルは?」 「おーナイス洋紀!そうだよレンタルなら買うより断然安いし!」 「みんなで割ればもっと安く済むし、ねえ爽太」 「うん、そう思う。そーするか、な、陽介」 「…悪い、帰ったら返すから」 「みんな、ごめんなさいぃ……」 ふにゃふにゃと縮こまるあたしをみんなが笑った。 うわー、あたしってほんとバカだなー、でもちょっと楽しいなあー、なんって、 あぁ。 やっぱ6人、好きだ。
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