コンプレックス

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「…さっきの?」 「……やー、悪い、その、」 爽太がさっと立ち上がって青年と向き合った。 気まずそうに片眉を下げた彼に爽太はにこりと微笑む。 「何か用ですか?」 「や、いやーね、先ほどのお詫びにと思って、コレ、買ってきたんだけどさー」 口にしながら青年は「はい」と言って爽太に青い色をしたかき氷を手渡した。 爽太が驚いたように目を見張ってそれを受け取る。 次に青年はすぐさまあたしの側にしゃがみ込んだ。 ウッとのけぞったあたしにはピンク色をしたかき氷が押し付けられる。 「はい。どうぞ?」 「………ッッ」 ふるっと首を振った。 なになにこのヒト、早くどっか行ってよぉ…っ ーーぽん 執拗に拒否る。 そんなあたしの頭に突然、大きな手のひらが乗っかった。 目を見開く。 そのでっかい手のひらが、わしわしと動いた。 「いちご、きらい?」 「…………、、」 そうつぶやいて、小首を傾げた顔が、ものすっごく屈託のない、笑顔。 あたしは思わず、肩の力抜けちゃった。 「ごめんね許してやってね」 はい、っとイチゴ味のかき氷を手に取らせると、満足そうに笑ってから彼は立ち上がってそう言った。 同時にきびすを返して去ってゆく。 ぽかんと眺めていると、するりと手のひらから滑り落ちたかき氷がペシャッと膝に落ちて地面に転がった。 驚きながら、かわいいピンク色に彩られた太ももを凝視する。 あーあ、と、どこか遠くで爽太の呟きが聞こえたような気がした。
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