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ーー
「あ!来たぁ!」
待ち合わせの時計塔にたどりつくと、当たり前だけど怒ったり呆れたりの顔をさせた4人が迎えてくれた。
つかつかと歩いてきた夏芽がくわっと爽太に突っかかる。
「アンタねぇ!手元にケータイないんだから何があっても時間厳守しなさいよ!心配するでしょう!?」
「わりわり、でもそれなりの理由がちゃんとあるからさ」
「あーそう、なら納得する理由を聞かせてもらおうじゃないですか!?」
喚く夏芽をまぁまぁと宥める洋紀。
いたたまれなくなって小さく口を開いてみる。
「…夏芽、あたしが」
「美湖はいーの!美湖はなあんも悪くないの!あたしは爽太に聞いてるんだよ!」
「………」
夏芽はあたしをチラリともせずに、代わりに頭をわしゃっと軽く撫でる。
じっと爽太を睨みつけてるそんな彼女を一瞥してから、ふ、と視線を落とした。
甘やかされるのは好きだ。
特別扱いも大好き。
だけどたまには、大声で怒鳴って欲しい時だって、ある。
この時のあたしはそんな自分の本音に気付いてはいなかったけど、だからこの心臓の奥の方にあるような寂しさの理由を解ってはいなかったけれど、
「そもそも美湖はトイレ行きたくて仕方なくはぐれたんだけど、アンタは知らん間に消えてたって言うじゃない!どーゆーことよ!?」
「や、ね、」
「普段勝手にふらふらする分にはかまわないけど、時と場合考えろってのよ!」
「だから悪かったって。別にいーじゃん、お陰で美湖助けられたんだし」
「はっ?」
イマ、気づいたところでそれはもう、
「間一髪だったんだぜ、……な?」
「………」
それはもう、遅いのかな
「………」
「…」
ーーぷい、
遅すぎたのかなあ・・・
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