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「……え、まだケンカ続行中?」
爽太の声に、そっぽを向いたあたし。
夏芽が一変した声色でこぼしてる。
「………知らね」
やっと、というか
ついに、というべきか
爽太の口から拗ねたような声が漏れた。
「なんか二人一緒に来るもんだからてっきり仲直りしたのかと、」
「…してねえみたいだな」
「みたいだなってアンタね、」
「だってそんなのオレが決める事じゃねえじゃん」
…………。
耳に入ってくる二人のやり取りを黙って聞く。
他のみんなもあえて口を挟むことはない。
「…あたしてっきり、久々に仲直りして興奮して遅れたのかと思っちゃってさあ」
「そんなんじゃねえよ」
「…怒んないでよ」
「怒ってねえ」
いつだってニコニコしている爽太だけど、怒るときだってあるよね。
いつもむっつりしてる陽介が声を上げて笑うこともあるように。
でもそれってよっぽどのことなんだろうなって、思わなきゃいけない。
でもあたしはさ、やっぱり、思えない子なんだよ。
どうしようもない、ホント、最悪なヤツだったんだ。
意地張ってるところに一本喰らわされたら余計に意地が剥がれられなくなって、そもそも爽太のくせにあたしに刃向かうな、とかマジでクソ野郎なこと思いだしたりしちゃってさ、ほんと、悪循環。
どうしてなりふり構わずに捕まえにきてくんないのかな、って、そんなこと考えてた。
それが出来ないほどの戸惑いを与えたことを承知していたけれど、やっぱりどうしても、どこか軽く見てたんだと思う。
あたしは彼に対していつまでも、どこまでも、高慢で傲慢だった。
「もーいーからメシ行こうぜ。腹減った」
そう言って歩き出した爽太はあたしの手を引いてはくれない。
様子を窺いもしない。
美湖、行こう。って、あの屈託のない笑みを見せることも。
ーーーこうして、6人で過ごした夏休みは、結局、じめじめした空気で終わりを告げたのでした。
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