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「みーこ」
呆れるくらいに名前を呼ぶ少年が現れた。
「みーこ」
「みこ」
「美湖!」
「美湖ー!!」
あたしは毎日毎日その声から逃げた。
満面の笑顔を貼り付けた少年から、逃げた。
「まてよみこ!」
でも追ってくるんだ。
どこまでもどこまでも。
「つかまえた」
そしてついには捕らえられ、
「離さない」
「好きだよ美湖」
拘束されてしまったのね。
『ーーようすけのところにいかせて!
いや!いやだぁ!!ようすけぇぇ…!!!』
きっと一生忘れないのは、彼も同じはず。
なかなか馴染まないあたしを陽介と彼はグルになってハメた。
ハメたって言い方するほどのことでもないけれど。
単純に、爽太の部屋で3人で居たところを、陽介がトイレに行くフリをしてそのまま家に帰っちゃっただけ。
それに気づいたとたんに泣き叫んだよねあたし。
なかなか戻らない陽介にそわそわしながらも口に出せない。
そんなあたしに彼は満面の笑みで言うの。
『ようすけならもどってこないよ』。
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