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もうねあたしは目を見開いて、扉まで一直線。 だがしかし鍵が掛かっているのよね。 彼の部屋、外から鍵が掛けられるようになってるの。 ガチャガチャするあたしを彼は高笑って。なんてゆーかもう昼ドラのようにね。 『おれとふたりきりだよ』なんつって。 『もうようすけには会えないよ』って。 やだあ!ってあたし叫んだの。 目には大粒の涙が溜まってた。 そんなあたしに彼は一歩、また一歩と近づきながら 『だいじょうぶだから』 『おれもみこのみかただから』 『おれもみこをまもるから』 『これからはおれをたよってよ』 ついにはあたしの両腕をがしっとつかんで、 『おれならいくらでもしばりつけていいよ』 今なら気付く、 兄はこの時彼に、そんな風に話していたんだって。 自分は妹に縛られていると、そう、彼に話していたんだということに。 そして当時の兄はもう限界だったんだって、いうことに。 そしてそんな兄を、彼は、救おうとしていたんだということに。 彼が救いたかったのは、あたしではなく陽介だったということに。 『ーーようすけのところにいかせて……! いや!いやだぁ!!ようすけえ!!』 狂ったように喚きだしたあたしは彼の瞳にどんな風に映っていたのかなぁ。 とにかく、コレはヤバいと悟った彼。 しかし携帯も持っていない時代。 鍵は外からかけられている。 あたふたと周りを見回し、目に付いたのが、あたしの部屋と隣接する窓だった。 泣き叫ぶあたしをほって彼は勢い良く小窓を開け、そこからあたしの部屋へ続く小さなバルコニーに飛び移ったの。 これがきっかけだったね。 あたしたちが部屋から行き来するようになったの。 ちなみにその後、運良くバルコニーから部屋へ続く窓の鍵が空いていて中に入ることが出来、すぐさま陽介が飛んできて一件落着でした。
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