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あたしはさ単純だからさもーーカンカン。 大好きな2人の悪口言われてはらわた煮えくり返るくらい! ……でも陽介ったら、なぁんにも聞こえてないような顔してるのよ。表情一つ変えないの。 だから教室出てから、あたし言ったわ。 今のひどいね!って。 さいていだね!って。 それでもお兄さまは生返事よ。 何度かはあったけど、その時一番に陽介にいらっとしたの。 あたし少し声荒げて、 『今のムカつかなかったの?!』って。 そしたらアイツ、 『べつに』。ですって! あたし、初めて陽介を幻滅した。 初めて、こんなやつ大嫌い!って思った。 『陽介のばか!』 そう叫んであたし、廊下を全力疾走。 向かうは、彼のもとだった。 『ーーあれ、みこ』 ばたばたとひとりで走ってきたあたしを、下駄箱で待ってた彼はキョトンとした顔で見つめてた。 そんな彼にあたしは、何の躊躇もなく、抱き付いたのよね。体当たりする勢いでね。 ーーぎゅうう!!! きっと彼、驚いたろうなぁ。 何が何でも兄から離れなかった子が、自ら兄をほって飛び付いてきたんだから。 『・・・み、みこっ??』 『……よおすけなんか、だいきらいっ…』  そう言ったあたしの瞳からは、大粒の涙がぼろぼろ零れてた。 すぐに陽介が呑気に歩いてやってきて。 あたしはそれに気付くとさらに強く彼にしがみついて。 『よーすけおまえ、みこに何したんだよーっ?!』 『べつになにも』 『うそつけみこ泣いてるだろーがよー!』 言葉とは裏腹に、嬉しそうな顔をしていたのを覚えてる。 むしろ声すらめちゃくちゃ弾んでいたくらいかもしれない。 そんな彼をものすごく可愛いと感じた。 それから3日くらいは、ずっと陽介に怒っていたと思う。 でも今思えば、2日目以降は彼にくっつく口実にしていたような、気も、するんだよね。
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