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横顔に、上目遣いの彼の瞳が突き刺さる。
振り向けないあたしに彼は言葉を続けた。
「一緒にさがそうか?」
「……」
ふる、と僅かに一度首を振る。
しかし爽太は構うことなく続けた。
「何探してる?」
開けない唇は、噛みしめられたまま
「ケータイ、かな?」
問われた言葉に、小さく微かに、頷いてみせる。
恐る恐る視線を向けた先で、首振り扇風機の風が彼の髪をサラサラと揺らしていた。
「よし」
そう声をあげて立ち上がった爽太。
「つっても、だいたいもう探してたよなー。この部屋にあるのは確かなのか?」
「う、うん。多分。あたしお昼まで陽介のベッドで寝てて、」
「んー」
あ、会話してる。
なんて思った自分が少し新鮮だった。
爽太と言葉を交わす事が、こんなに特別なことになるなんて。
腰に手を当てて一回り見渡した爽太は、身体を反転させてベッドの方へ足を運ぶ。
「だったらこの下とか、」
ベッドの下の空間を覗き込む彼。
「エロ本とか隠してあったりしてなー」
「ーーばかっ、」
さらっとこぼされたセリフに赤面する。
ジョークを飛ばせる余裕があるのか、
それとも和ませようとしてなのか、
どっちだって構わないけど爽太らしいと思った。
きっとこーいうのも彼に人が集まる理由の一つ。
ってゆーかっ、陽介がそんなん、持ってるとかなんかヤダし!
想像できないっ!
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